貿易実務の基本~為替~

2019 年4 月26 日に発表された2019 年版中小企業白書によると、16 年度に直接輸出を行った中小企業の割合は21.4%でした。これは97 年度と比較すると+5.0%の伸び率です。海外子会社を保有する中小企業の割合も、16 年度は14.2%(97 年度比+8.2%)と高い伸び率を示しています。

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(出典:2019 年版中小企業白書)

顧客の海外進出や国内市場の飽和により、海外に活路を見出す中小企業は増え続けています。一方、海外の企業と取引をしたいが、何から始めていいのか分からないという事業者が多いのも事実。海外進出を検討する際は、先ずは中小機構の無料相談をご利用いただくことをおすすめします。

さて、本日は為替についてお伝えします。海外へ製品を販売する際、日本円で取引ができれば売り手は為替リスクを考慮する必要がありません。しかし、ここ数年は日本円での取引が難しくなってきているように感じます。きっかけは、2008 年のリーマンショックです。2007 年に平均118 円/ドルであった為替が、リーマンショックを境に円高がすすみ、2011 年には75 円/ドルに到達しました。例えば、2007 年に118 円(=1 ドル)で日本から製品を購入していた海外企業は、2011 年には118 円(=1.57 ドル)とドル換算で50%以上の値上げを被ったことになります。この反省から、近年は日本円での取引に合意する海外企業は激減しました。したがって、現在、売り手が為替リスクを完全に排除できるケースは稀です。(例外として、為替予約や通貨オプションなどの手段はありますが、デメリットが大きくおすすめしません。。。)

それではどのように、為替リスクを低減するのか。最も重要なことは、取引を開始する前に為替リスクについて買い手と交渉することです。例えば、『毎年4 月、10 月に直近半年間の平均為替レートが、取引開始時の基準レートから±5%以上変動した場合、直近の平均為替レートに合わせて販売価格を見直す。』などの文言を契約書に謳うことです。もちろん交渉事ですので、この通り契約できるケースもあれば、50%だけ反映することで落ち着くケース、全く認められないケースもありますが、重要なことは取引を開始する前に交渉することです。取引開始前であれば、条件が合わなければ取引しないという選択も可能です。これが取引開始後に撤退となると、買い手の信用を失うだけでなく、補償問題に発展する可能性も出てきます。為替は自社ではコントロールできませんが、生じるリスクは交渉によりコントロールすることができます。

海外ビジネスに不安があれば、是非、弊所までご連絡ください。これまでの実務経験で培ったノウハウに基づき、実行可能な手段を提案させていただきます。