経営改善に向け、取引先との契約見直しが必要な理由

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(出典:2019年版中小企業白書)

 

2019年版中小企業白書によると、16年度に債務超過の状態にあった中小企業の割合は、33.4%でした。債務超過とは、貸借対照表において資産よりも負債が多い状態を指します。簡単に言えば、会社の全資産を売却しても借金が残る状態が債務超過です。

債務超過が続き、資金繰りに困っても、取引先に打ち明けられず、自社で抱えこんで最終的に倒産してしまったケースを過去に何度か見てきました。営業マン時代には、何の前触れもなく顧客が倒産して売掛金を回収できなかった経験もあります。

 

そんな経験から、本日は経営改善についてのお話です。

債務超過に陥ると・・・

債務超過に陥ると、事業を行う上で多くの困難が生じます。例えば、金融機関から新規で融資を受けることが難しくなります。また、取引先からの信用が低下して、仕入代金の支払サイト短縮、場合によっては仕入代金の前払いを求められる可能性があります。(実際、私は営業マン時代、財務状況の悪い顧客には代金の前払いをお願いしていました。)このような理由から、債務超過の状態が続くと、キャッシュフローが悪化して資金繰りに窮することになります。

資金繰りが厳しくなると・・・

先ずは本業には関係のない資産の売却、人件費や諸経費、在庫の削減など、自社の努力で解決を図らなければなりません。これだけで資金繰りの改善が見込めない場合、取引先との価格、支払条件変更の折衝や、金融機関に※金融支援をお願いすることになります。

※金融支援とは、借入金の返済条件を見直すことや、融資をお願いすることです。

 

取引先との契約見直しについて

冒頭に触れた通り、自社の窮状を取引先に打ち明けることは、取引停止というリスクを孕むため、容易ではありません。しかし、取引先(特にBtoB取引における顧客)に対しては、取り返しのつかない状況になる前に窮状を打ち明けて取引条件の見直しをお願いすべきです。

 

一般的に、親事業者、下請けの関係において、親事業者の調達部門の役割は、仕入先と信頼関係を構築して、長期に渡りQCDに優れた部材を調達することです。したがって、調達部門は、仕入先の倒産を何としても回避しけなければなりません。

 

仕入先の倒産を経験したバイヤーと話をすると、どのバイヤーも口を揃えて「どうして窮状を伝えてくれなかったのか、もっと早くに把握していれば打ち手はあったのに。」というコメントを残しています。

 

また、親事業者が上場企業の場合、仕入先に毎期、決算書類の提出を求めることがあります。これは与信管理のみならず、仕入先の保護を目的としています。財務状況の良くない仕入先に対しては、値引きを要請しない、部材を他の仕入先へ転注しない、新しい部材を優先的に発注する。このような配慮が裏で行われています。したがって、経営状況の悪化を知られたくないからといって、粉飾決算は絶対にしてはいけません。

 

まとめ

経営改善には、取引先、金融機関の支援が不可欠です。顧客に対して、取引停止を恐れて自社の窮状を切り出せないケースが散見されますが、仕入先を守ることもバイヤーの仕事の一つです。手遅れになる前に窮状を伝え、契約見直しに着手できるよう、日ごろから顧客とは信頼関係を築きましょう。